柔道好き男の闘病記

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『逆風に立つ』ー運命に従い、役割を熟し続けるー

 松井に勇気づけられた人はどれだけいるだろうか。

かくいう僕も勇気をもらった1人なのだが。

 

2009年のワールドシリーズでの松井の活躍を、僕は家電量販店のテレビで見ていた。

人生に絶望し、それでもあきらめるわけにはいかないと思いながら生きていたあの頃。

スポーツ選手で1番好きな松井の姿を、ただただ希望を持って見ていた。

 

 

 苦手だったフィリーズペドロ・マルチネスを、もう松井には投げる球がないとばかりに打ち崩し、アーチを量産した。

ワールドシリーズ6ゲームで、通算打率6割1分5厘、3本塁打、8打点。

僕は、松井へのMVPコールをドキドキしながら聞いていた。

 

松井のすごさというのは、人の期待に応えるべく全力で努力できるということに尽きるのではないか。

だからこそ、多くの人が松井を育てようと近づいてくるのではないか。

松井なら自分の思いを背負ってくれるとの期待感が持てるのではなかろうか。

 

いや、そう言うならもう1つ付け加える必要がある。

松井のすごさは、人の期待に応えるべく全力で努力できる精神性を持ち、さらにその期待の大きさに応えるだけの強靭な肉体を持っているということである。

松井のような人間は稀有な存在であろうと思う。

そうなれるということが、様々な要因を含めたうえで、確率が非常に低いという意味でだが。

 

松井は引退してしまったが、あの時の記憶は僕の中に生き続ける。

あの時救われた僕は、僕の中で死ぬまで生き続ける。

それでいいのではないか。

 

スポーツ選手はその国の文化などいろんなものの影響を受けて出来上がっているわけだから、他国の選手との比較もされやすいし、存在がナショナルアイデンティティーそのものとして見られてしまう。

スポーツ選手の使命は非常に大きいが、期待される喜びも大きいということで頑張ってほしいものだ。

 

伊集院静『逆風に立つ 松井秀喜の美しい生き方』角川書店